スタジオパークからこんにちは「ジャズピアニスト・大江千里」2013/09/05

録画しておいた大江千里のスタジオパーク見ました。

時々日本のポップスやロックの人、元アイドルなどが安易に「これからはジャズやります」と言っては結局全然出来なくて、いつの間にか無かった事にして元のポップスに戻ってるの見ませんか?正直大江千里にも全然期待していなかったんですが、驚くほど真剣に取り組んで勉強していたことが分かりました。

日本での成功を全部捨て去って47歳で渡米して音大に入学して勉強するのは、楽しくもあるけど、勇気のいる決断だったと思います。

大江千里といえば十年愛(もう許してやれよ)…じゃなくて、ミュージシャンというよりも、トップランナーでの司会が好きでした。いつも非常に的を射た発言と、自分と違う意見の人でも真っ向からは決して否定しない我慢強さ、知的許容量の広さは、この人なんでミュージシャンやってたのかな?と思ったほど。ただ、失礼ながら音楽家としては、ちょんちょんとコードを縦に押さえた程度のピアノ演奏で、単純なリズムの曲が大半だったように思います(大ヒット曲しか知らないので、アルバム収録曲は知りません、ごめんなさい)。なので、ただアメリカに渡っただけでは、大して上手くはならないだろうと思っていたのですが、流れた映像の中では、まだちょっとラウンジピアニストっぽいとはいえ、ちゃんとジャズらしく聞こえてきました。相当な努力をしたのだと思います。

今日の放送ではスタジオにグランドピアノを用意して、大江さんはずっとピアノを弾きながらのインタビュー。
「ポップスではタテにコードを押さえていたけど、ジャズではこう横に流れる感じなんです」と実演。
ポップスはタテノリだけど、ジャズは後ノリでリズムが違う事なども、基本から説明。コード進行もジャズはポップスよりずっと複雑ですが、渡米までは「どうすれジャズになるのか」が漠然としか分かっていなくて、ニューヨークで音大に入ってから手探りで学んで行ったそうです。

今回の取材に応えてくれた大学の恩師には「千里は特別な生徒だった。一番年上だったけど、一番能力は劣っていた」と言われてしまうほど。「学び続けなさい」というメッセージで締めくくり。

大江「ポップスでジャズっぽいのもやっていたので、自分はセンスあるんじゃないかとタカをくくっていたけど、全然ダメだった」と、苦笑いしながらも素直に認めていました。

日本のポップスのオシャレ系(小西ナントカとか)がやってるジャズっぽい演奏は「ジャズっぽい日本のポップスアレンジ」としか形容しようのない、ジャズとは全く似て異なるものですが、本人たちはジャズをやってるつもりでいるのが非常に残念でした。*1

大江さんは、自分はジャズを理解できていなかったと言っていましたが、これほど成功していた人がこんなに謙虚に自分の至らなさを認められる(しかももう50過ぎたおじさんが!)のは、なかなかありえない事だと思います。私は大江千里のファンではなかったけど、長年沢山のファンがいるのは、やはりこの人格が大きいのだろうなと実感。

入学してすぐのブルースのアンサンブルの授業では年下の同級生に「一人だけジャズじゃない音を出してる人がいるから、演奏が続けられない」と中止されてしまった事もあったとか。ちゃんと自分から手を上げて自首したそうですが、その後も19歳、20歳の同級生がピアノを弾き始めるとちょっと待って!と手元を携帯で写真に撮って、ジャズ特有のコードを覚えていったそうです。

英語も大学入学に必要なTOEFLスコアは持っていたものの、実生活ではまだ十分ではなかったようで、地下鉄でとなりの人の話している事をシャドウイングしたり、3時間のラジオ番組のDJを英語で行ったり、様々な努力をしていたそうです。まだ英語での作詞には苦労しているそうなので、歌入りのジャズアルバムはすぐには出来上がらないでしょうけど、やはり自分の言葉で歌いたいでしょうね。もちろんスタンダードの名曲は星の数ほどあるので、スタンダードを歌ってくれてもいいのですが。

音楽面でもずっと努力を続けていて、毎月7―8曲!のオジリナル曲を発表する定期ジャズライブを行っているそうなので、なんだか頭が下がります。

さて、今回久々日本に帰ってきたのは、夏の風物詩 東京Jazzへの出演のため。大学の先輩(といってもずっと年下)ベーシストと一緒に、本日9/7(土)18:00から出演。NHK FMで9/8(日)深夜24:20から放送予定だそうです。
http://www.tokyo-jazz.com/jp/program/program_hall.html#prg0907n

番組を見逃してしまった方たちへ:この番組で話していたのとほぼ同じ内容を語っているインタビューがあったのでどうぞ。
http://www.jiji.com/jc/v4?id=senri12070001

*1:これはアメリカンアイドルのジャズウィークでもいつも感じるフラストレーションです。ジャッジたちもジャズを全然分かっていないので、メンターのハリー・コニック・Jrがカントリーしか歌えないダサい候補者たちに短期間でジャズのエッセンスを必死で教えてあげているのに「厳しすぎる」と逆にハリーを責める始末