あまちゃん最終回 NHK「あまちゃんを語ろう」イベント 塩見三省さん・訓覇チーフプロデューサー対談書き起こし
あまちゃん、ついに本日9月28日で最終回でした。その記念すべき日に日本青年館で開催された「あまちゃんを語ろう」イベントに参加してきました。
3000円の会費制なのに応募者多数で、青山のNHK教室から急遽 日本青年館に会場変更。300名いたそうです。
訓覇チーフプロデューサーも助太刀して、滅多に人前に出ない塩見三省さんがトークショー。テレビだったら放送事故級にゆっくり喋る塩見さんでした。
勉さんと違って紺とグレーのおしゃれなセーターにチノパン姿の塩見さんでしたが、ちゃんと勉さんのヒゲを保ったままで登場してくださいました。
塩見さん「撮影は一ヶ月半前に終わりましたが、今日のイベントがあるというのがずっと心のなかにあったので、まだ終わってないという緊張感が続いていました」
今日は 最終回にして琥珀一筋だった勉さんの口から「琥珀なんかより」発言が出たことに「今回のはホンもらった時ついていけなかった」そうです。
訓覇さんも最後の方で「宮藤さんの真骨頂。ふつう最終回15分しかなくて皆アキちゃんとユイちゃんが見たいのに勉さんに5分取らない」
塩見さん「最初に宮藤さんやプロデューサーから聞いたのは、勉さんは時間が止まってるイメージ。でも今日の回で、勉さんの止まっていた時計が動き出したのかも」
訓覇さん「キャスティング難しかったです。この話はアキ、春子、夏さんだけが動く。他の人たちにはストーリーがない」そんな人たちをどうやってキャスティングすればいいのか。
訓覇さん「普通ドラマの台本では、会話が始まる前にその場面に誰がいるのかト書きに書かれている。ところが宮藤さんの台本ではト書きなしでいきなり会話が始まる。宮藤さんに確認したら、喋っていない人もずっとその場面にいるんですと言われた。それが勉さんでした」
塩見さん「(リアスの)角なのでライトの当たりも悪くて。特にえりさん入ると隠れてしまう(一同爆笑)。他の人は気を使ってくれたんですけどね」
塩見さん「台詞なさすぎて大丈夫かな」と心配に。
訓覇さん「塩さんとは付き合い長いので、真面目なのは分ってた。それが心配でした。楽しくやって下さい、と伝えました」
また、訓覇さんは(天野家三代以外のほとんどのキャラは)「なんの背景も描かれていない役だった」とも。
塩見さん「珍しい役。(アンサンブル劇なので)一人ひとりが役割を果たす。出過ぎず、引っ込みすぎず。パフォーマンス(自分の演技力)を見せつけようとする役ではない」だから「人前に出るのはイヤだったが、あまちゃんについてなら話せると思った」
イベントは、勉さん名場面を振り返りながら、一つ映像を流しては止めて、二人がコメントする形式でした。
司会なしで超まったり進行。
勉さん名場面その1「初めてのゴーストバスターズ」
リアスで大吉が春子に告白「二人きりなんだし、いいじゃないか!」勉さんもいたのに存在スルー。無言のまま「お、おれいるのに!」という表情でびっくりしている勉さん
勉さんが驚く顔は演技でなくて素。撮られていると知らなかったそうです。
この回は井上剛さんが監督。「勉さんカメラ」を設置して、気付かれぬうちにリアクション撮影。塩見さんは驚く自分が撮られていたのを放送を見て初めて知ったそうです。この後は台詞がないシーンでもリアクションを撮られている事を認識してやっていくようになったそうです。
他のインタビューで井上Dが言っていましたが、沢山の人の角度から撮りたいので、カメラを何台も設置する異例の撮り方。時間がなくなってしまうので、テストなしでいきなりカメラ回します。
ここでは勉さんを無視して暴走する杉本哲太さんのアドリブ無双によって、塩見さん自身掴みきれていなかった勉さんが分かった。
塩見さんによれば、ゴーストバスターズを春子に1フレーズだけ歌わせ、勉さんにもマイク向けたものの、歌おうとした瞬間マイクを引いて、結局自分が歌う大吉。ここが哲太さんのアドリブ
訓覇さん「井上Dはおしりを長く撮りっぱなしにする。ほとんどは使われないが、セリフがなくなってからのシーンをどう演じるかで、役者の本性が分かる」
塩見さん「この放送を見て他の監督たちも、北三陸の皆がどのくらい勉さんを無視してるか分かった」
勉さん名場面その2「アキとの初めて二人のシーン」
琥珀洞窟は一人になれる場所。叫んでも誰にも声は聞こえないと勉さんに教えられると、アキちゃん「東京に帰りたくねえ!ずっとここにいてえ!夏ばっぱやみんなと海潜っていてえ!」
塩見さん「(年上として引っ張るのではなく)能年さんの視点に合わせようと思いました。老人の皮を被った中学生でした」
塩見さん「能年さんと演じるのは宇宙遊泳みたいですてきでした」
訓覇さん「能年さんと最初に演じる時って、強烈でしょう。(先ほどの洞窟の映像の)塩さん、ちょっと舞い上がってるよね」
塩見さん「自分が若い時を思い出すと、年取った人と話すのは面倒だったから、いま自分が年を取った時、相手してくれる若い人が可愛いんです」
洞窟の撮影の時は、塩見さんが本物の琥珀を能年ちゃんに持たせてあげたそうですが、能年ちゃんはそれぞずっと握りしめたまま演技。握りしめすぎて、粉々になって地面に落ちてしまう。アキが採掘を手伝うシーンで「これ琥珀かな?」と差し出したものの、塩見さんもその頃はまだ琥珀に全然詳しくないので分からない。掘り当てた!と二人でキャーキャー喜んでいたそうです。でも琥珀の専門家さんに聞いたら「そんなわけねえ」と言われてしまったそうな。
このシーンでは、なぜか勉さんがアキちゃんに「アキ、掘ってみな」と呼び捨て。台本では「アキちゃん」になっていたのに。
訓覇さん「二人の初めてのシーンで、これでいいのかな?と。キャラクターの距離感が大事なので。でも塩見さんがそう呼びたいんなら、もうしょうがないなと思いました」
塩見さんも撮影初期の段階で洞窟にいけて良かったと語っていました。
塩見さん「入口がすごく狭いんです。入り口から20〜30mの所にアクティング・スペースがあって。でもコウモリがビュンビュン飛んでるし。湿度は100%だし。狭いから撮影機材の搬入も大変で。でもそこで40年も掘ってきた人なので『俺はここで生きてきたんだな』と思いました」
訓覇さん「東北の人はシャイで本音をなかなか言えない。洞窟なら一人になれる、本音が話せるのはどう?とロケハンの時 宮藤さんに言ったが興味なさそうだった」でも結局このシーンの台本に採用されました。
他にも、琥珀洞窟をこのまま掘り進めたらどこに着くかな?小袖海岸かな?という話をふったが、宮藤官九郎の反応は薄い。でもその後大分経ってから、水口とユイの会話で「この洞窟をずっと掘って行ったら東京につながっているかも」というセリフに生かされていました。
訓覇さん「塩さんが撮影始まってすぐの頃に、東京のデパートで琥珀展を見に行ったら『俺だけだったよ!』と言っていましたね」
塩見さん「東京の高島屋だったかな?大東北展といって、すごい人出だったのに、琥珀のところだけ誰も人がいないんですよ。出店してる人に今度ドラマで琥珀を掘る役やるんですと言っても「はあ?」という反応でした」
訓覇さん「せっかくなので、能年さんについて、塩見さんに聞きたい人いますか?」
男性1「能年さんはすごい人見知りだと聞いています。先ほども能年さんは演じている時と素の時がぜんぜん違うという話も出てきましたが*1、若い時の大竹しのぶのを彷彿とさせるのではありませんか?」
塩見さん「僕は年をとっているので、能年さんにも橋本さんにも殆ど話しかけないんです。でも誰だって初めての人には人見知りするでしょう。能年さんは、演技というか『い方(在り方)』がすごくいいんです。その場にいる『い方』が。なので演技と素の違いも分かりませんでした」
訓覇さん「能年さんは誰もでもない感じです。大竹タイプ・・・ぐっと引きつけるものはあるけど、あんな魔性ではないです」
訓覇さん「大事な子だから、何か伝えようと(教えようと)してきたけど、半年くらいでやめました。猫背も直そうとしたけれど。主役なのにあんな猫背ありえない。配役の時も本当にあの猫背どうしようかと思った。注意すると「ハイ!」と言ってすぐ直すけど、5秒くらいしか直せない。演技に集中しだすとすぐ猫背に戻る。『もういいや』と思いました。宮藤官九郎さんに相談しても『いいんじゃないですかー』と言われてしまって。でもテレビドラマの常識では、主役があんな猫背はダメなんです」
塩見さん「でも、かっけーよね、あれは」
勉さん名場面その3「水口の裏切りが発覚」
考古学を学んでいると称し、琥珀について一晩熱く語って勉さんに弟子入りした水口。でもそれは全部嘘でした。ついに真相を知った勉さんは、琥珀洞窟で水口を殴りますが、よろけてしまう。
その後リアスで春子、大吉、吉田君、菅原さん、ストーブさんに謝る勉さん。今までほとんどセリフがなかったのに、堰を切ったように話し出します。「自分が至らないせいで迷惑かけた。琥珀が好きだと言っていたのに、水口は本当はユイちゃんとアキちゃんをスカウトするために東京から派遣されてきた芸能マネージャーだった。今夜自分の車で東京に帰ると言っていた。自分はもうリアスには来ない。これからは俗世間に交わることなく、琥珀のことだけを考え、琥珀を愛し・・・」春子・吉田・大吉「今なんて言った?」
勉さん「琥珀を愛し・・・」
春子・吉田・大吉「その前!」
勉さん「琥珀の事だけを考え・・・」
吉田「わざとやってんのか、このジジイ!」
勉さん「自分の車で東京へ帰る・・・」
春子・吉田・大吉「それだ!」
菅原さん「国道封鎖!放送かけろ!」
何度見ても大爆笑のシーンですが、実は塩見さんには内緒の演技プランがあったようです。
塩見さん「北三陸はほんわかした所なので、皆そういう人たち。だから宮藤さんから『水口は松田龍平』と聞いた時はびっくりしました。松田龍平?(他のキャラクターと雰囲気が違うので)ある種の緊張感が走るんです。キャスティングは正解でした。
でもこれはプロデューサーにも内緒だったけど、僕はユイちゃんと水口を逃してやりたかった。二人を東京に行かせてやりたかった。今見るとよくわからないけど、あれは時間稼ぎのつもりだったのかもしれないです」
塩見さん「こんなに喋った事なかったのに、このシーンでは僕が何か言う度に、皆が『じぇじぇじぇ!、じぇじぇじぇ!』と言う。移ってしまって『俗世間と交わることなく』を『じょくしぇけんと交わることなく』と言ってしまった。そしたらすかさず小泉さんが『今なんて言った?』と(ツッコミ入れてきた)。間違えたのでこれはもう使われないなと思ってるのに、皆芝居を止めないで続けていく。小泉さん、哲太、徹平、良々、吹越。すごいチーム。容赦無いメンバーでした」
ここでまた質問タイム。
男性2「無言の演技は難しいと思うのですが、いかがでしたか?」
塩見さん「映画などでも無言の演技は難しいと言われるけど、この役の場合は。リクションだけ。パフォーマンスしない。珍しい役でした。難しいと言われているけど、どれほどのものだろうと。試してみようと。画面に写っていなくても勉さんでいられるようにチャレンジでした。無言が難しいという概念には囚われていないです」
男性2「勉さんと似ている所はありますか?似てない所は?」
塩見さん「全然違います。でも、うちの人に言わせると似ていると言う。老人の皮を被った中学生なんです」
訓覇さん「子供なんですよね。勉さんは子供みたいなんです」
塩見さん「この所渋めの役が多かったけど、それは芝居していました。勉さんは芝居していない。でんでんの組合長に七味入れ続けるシーンも(コミカルなシーンをやることには)驚かなかったです」
勉さん名場面その4「勉さん増殖」
眠れないアキちゃんが水口の部屋で横になってウニを数えては叱られ、懲りずに勉さんを数え始めて、喫茶リアスに勉さんが増殖していくシュールなシーン。
(実はこの時のアキちゃん目を瞑って寝ている事に今日気づきました。いつも目開いて寝るわけじゃないんですね)
塩見さん「これは井上(ディレクター)さんの演出のおかげですね。井上さんに『塩見さんこっち、はい次はこっち、こっち』と言われたとおりに。最後はやることなくなって(カウンターの向こうに回って)バーテンやってました」
訓覇さん「このシーンが面白いのは、水口がいるから。勉さんを騙して離れて行った水口は、勉さんという言葉を聞きたくないはず。宮藤さんはここを水口との関係の中で書いている。打ち合わせでも宮藤さんは『水口にとって最悪だったと思う』と言っていました」
塩見さん「勉さんはいつも本線と関係ない所にいる。でも横線ではいろんな所にからんでいる。勉さんとしては筋が通っているんです」
訓覇さん「龍平くんはすごい人気になりましたね。水口は。なぜだったと思いますか?」
塩見さん「やっぱり松田さんの色気でしょう」
まさかのお色気発言。ああいうものをキャッチするのは、わたくしのようにツイッターに生息する水ゴケみたいない女子だけだと思っていましたが、なんと間近で共演している塩見さんも松田龍平のお色気を感じ取っていたとは。きっと会場にいらしたなかはらももた先生も心のなかで「勉さんよく言った!」とガッツポーズを取っておられたことでしょう。ってすみません、皆さんの事を水ゴケにしちゃってすみません、すみません。
訓覇さん「僕は松田君とも付き合い長いけど(訓覇さんと井上さんはNHKの名作土曜ドラマ「ハゲタカ」組)、もっと人気が広がればいいなと思っていて。じゃあ、誰かに聞いてみましょう」
女性3*2「騙されていたと分かって洞窟で水口を殴るシーンが、松田さんと最初に撮ったシーンだと聞いてびっくりしました。その後、(時間を巻き戻して)水口を信用するシーンを演じるのはどんな感じでしたか?」
訓覇さん「詳しいですね!」
塩見さん「松田君は独特な雰囲気なんですよ。殴るシーンも僕コケちゃって。井上ディレクターだったんですが、テストしない人なんです。(洞窟の中は)地面がズルズルで。コケちゃって松田君にも『しょうがないなあ』って顔されちゃって失敗だと思ったけど、使われていました」
塩見さん「松田君と話した時に『俺、琥珀磨くの嫌いじゃないんすよ』とか言うんです。役じゃないですよ。プライベートでですよ。『だんだん琥珀好きになってきました』って。それを聞いてホッとしました。こいつの事は守ってやらなきゃって思って。そう思ったのは、松田君だけです」
女性4「ツイッターで色々な人の感想を見られたおかげで、ますますあまちゃんと勉さんとミズタクが好きになりました。プロの漫画家さんやアマチュアの皆さんがあまちゃんの絵を描いた、ツイッターの『あま絵』はご覧になりましたか?」
塩見さん「・・・。本は、見ました。あまちゃんの。ここまで想像出来るのは、すごいなと。特にももたさんのなんかすごいです」
女性4「今日なかはら先生会場にいらしてるはずですよ!」
会場ざわわざわわ状態。ついに右端の方に座ってる女性にマイクが。立ち上がると茶髪ボブできゃしゃで、おしゃれな感じの方でした。「え、男じゃないの?」とつぶやく男性の声が聞こえてきてびっくり。いや、あんなバリバリの少女まんがを描く乙女な男性なら一度お会いしてみたいです!
ももたさん開口一番「すいません!ほんっとーにすいませんでした!つ、ついでに質問も…!どうして勉さんは…どうして…(その思い余りて言葉足らず)…好きです!!」いきなり告白。「…あんな松田龍平がやってきて、考古学とか言ってるのを信じてしまったんですか?」言えました。よかった。
塩見さん「琥珀が好きだと言う人がいたのと、松田龍平と言うのがあって。『騙されてもいいや』って。もちろん嘘だというのはホンで知ってる。分かってる。やっぱり琥珀が好きだと言ってくれるのが嬉しかったんでしょうね」
勉さん、騙されてもいいやって、それはみすずさんとほぼ同じ心理状態なのでは・・・(こら)。
塩見さん「最終回でカットになったけど、恐竜の骨だと分かると、平泉成さんの役に『それは北三陸の三大名物になるぞ』と言われて『み、みじゅぐちゅくん、それ、僕が見つけた事に』って赤ちゃん言葉になってしまう所が…。あのセリフは、役者生命が終わると思いました。あ、ももたさん、描いたらダメよ!」
塩見さん「…甘えてるんでしょうね」
ももたさん「水口君に?」
塩見さん「松田君は年下だけど、兄貴みたいなんです。最初は水口が甘えてきて(騙したけど)勉さんが許したけど」
訓覇さん「描いて頂いていいんですよ。15分という制約があって(ドラマでは)描ききれないものもあったと」
(塩見さんに向かって)「多少怪しいと思っていたのでは?」
塩見さん「それはない。ももたさんの(漫画を)見てええっ?!と思った。水口を逃してやりたかったし」訓覇さん「色んな見方で書いて頂いていいんです」
この時残り15分切っていました。訓覇さん「あと3本あるんですが…」
勉さん名場面その5「悲しみのナポリタン」
グレてしまったユイちゃんが心配なれど、どう接していいのか分からない大吉、吉田君、菅原さん、勉さん。
春子がアバズレの食べ物ナポリタンを出してあげ、春子「今だよ」4人衆「?」春子「慰めるのよ!」 4人で列車ごっこのように連結してユイちゃんに近付くものの、大の男たちが勇気が出ない。先頭がどんどん入れ替わる。結局勉さんがユイちゃんの前に座り、粉チーズをかけてあげると、頑なだったユイちゃんの目からすっと涙が。
訓覇さん「アドリブが多いように思われれるんですが、実はほとんどは既に台本に書いてある。ここもそう。でも宮藤さんも好きなアドリブシーンは?と聞かれた時に挙げていたのが、このシーンでした」
塩見さん「(台本に反して)哲太が席を立った時、まずいなと上から押さえ込んだんだけど。(勉さんの台詞)『チーズかける?』がアドリブでした。それに『うん』と言った橋本さんもすごかった。まだグレている時だったのに。あの前にずっとゲームやってたでしょう。放送事故すれれくらいの撮り方でした。ずっと長回しで。この時小泉さんも性根座ってるなあと」
訓覇さん「3時くらいに終わればいい?」会場から拍手。延長決定。
訓覇さん「これは泣けますね」
塩見さん「小泉さん、貫禄だねえ。皆役名で呼んでいたけど、小泉さんだけは小泉さん。うちの女房がハルコだからっていうのもあるんですが」
訓覇さん「この日は現場にいなかったけど、小泉さんから『ちょっとすごいの撮れたよ』って聞いて」
塩見さん「ユイちゃんがテレビに出演するシーンで、琥珀を紹介してくれる所があって。僕がアドリブで『やったー!』とリアクションしたら、小泉さんは『いたの?』って!すごい人だなあ。『いたの?』ですよ」
訓覇さん「あの人は瞬発力に長けている。小泉さんは、作り込んできてというのではないですね」
塩見さん「(ナポリタンのシーンは大吉、吉田君、菅原さん、勉さんの)4人で『チーズ、チーズ』って言ってて。で僕が『かける?』って言って、『うん』って答えて、そして彼女が少し涙をこぼす。あとでびっくりですよ、大人4人が」
訓覇さん「老兵は去りゆくのみ…」
塩見さん「若い人に合わせるのはすてきです。それまでユイちゃんは誰にも心を開いていなかったのに」
訓覇さん「橋本さんだけ撮影が10時までで。高校生だから。NHKはちゃんと守るんです。自分だけいつも10時で帰らせてもらっていたから、その分芝居で返しますと言っていました」←10時でも十分遅いと思いますが、他の人たちの芝居は更に後にスケジュールされていたそうです。
塩見さん「あれだけの力量をテストなしでやるのは大変なこと。普通だと2-3年かかって撮る量」
勉さん名場面その6「恐竜の骨発見」
まだ記憶に新しい最終回のシーン。
訓覇さん「みじゅぐちゅ君がどの辺に入る予定でカットされたのかにも注目して見てみて下さい」←訓覇さん結構Sです
訓覇さん「『めちゃくちゃくやしい…』が塩見さんのラストカットになってしまいましたが」
塩見さん「北三陸の看板に三大名物があって、北鉄、北の海女、もう一つに勉さんは入りたかったんです。でうもこうやって見ると、ない方がよかったですね。あの台詞は、宮本信子さんにも『だいじょうぶなの、あなた?』って言われて」
訓覇さん「死ぬ前に思い出し笑いしそう。塩さんがあの台詞言う時の表情を想像して」
塩見さん「今までの(コミカルなシーン)は全然問題なくて、良かったんです。これが最終回でなければ」
訓覇さん「あれは宮藤さんの台本の真骨頂。なんで最終回で恐竜の話になるの?皆感動したくてしょうがないのに。これがあるところがあまちゃんの懐の深さですね」
塩見さん「ずっと琥珀を磨いている勉さん、天使だなと言われて終わりたかったのに」
訓覇さん「ふつう最終回15分しかないのに、皆アキちゃんとユイちゃんが見たいのに、なんで勉さんに5分使うの。しかも次の予告で10秒なくなるし。でもまあ、描きたかったのはちゃんと、トンネルの向こうの未来が描きたい回だったので」
塩見さん「元になった、北三陸で琥珀を磨いているカミヤマさんは、一日5時間琥珀磨いてるのに、市会議員やっているんですよ」
訓覇さん「ごめんなさい、今言われた事分からなかった」←終盤になって訓覇さんのSがじわじわと滲み出してきました。
勉さん名場面その7「夏ばっぱの見送り」
最後は、塩見さん自身が選んだお気に入りシーン。
若き日のオーバーオール姿の勉さんが、春子を大漁旗で見送る夏さんを目撃するシーンから、春子が夏に愛されていた事をようやく知り、結果的に自分のせいで春子が夏の見送りを見られなかったため、自分を叱る大吉さんの名シーン「大吉のバカ!バカ!」、そして夏さんがアキちゃんを見送るシーンへ。
塩見さん「春子と大吉のシーンとてもいいですよね。この前に僕の勉さんが、夏さんが見送りに来ていたと春子さんに教えるシーンがあって。僕は大吉のシーンは出ないけど、前室で見ながら泣いていたんです」
訓覇さん「編集室で感動しました。大吉は、あれは、ありえない芝居。(大吉のバカ!は)ふつう独り言ですよね。それをすごい大きい声で、5分くらい続く」
塩見さん「井上監督にすごかったですねと言ったら『男の子はああいう形でやる』って」
訓覇さん「杉本哲太さんはドラマを引っ張っていっていましたね」
塩見さん「哲太はこのドラマの機関車でした」
訓覇さん「台詞も多くて。杉本さんは取材の度に『勉さんの役がやりたかった』と言っていました。塩見さんは一週間90分の中で『今週は台詞が5つしかない』とか言ってましたよね。皆嫉妬してましたよ。『嬉しそうに言いやがって』って」
最後の質問コーナー
訓覇さん「残り10分になりました。質問はありませんか?塩見さんは多分もう一生人前には出てくれませんよ」
男性3「続編があるとしたら、どんな話にしたいですか?」
訓覇さん「考えたことないです。全力投球でここまでやってきました。誰も考えていなかったです。僕も含めて、多くの人に見てもらったからと言って、次もというチームではないので。それ以上のものがないとやっても。能年さんだけでしたね。クランクアップの挨拶で、衝撃でしたよ。ハア?何を言っているんだと。でもこの子でよかったなあと思いました。朝ドラの撮影は大変です。皆本当にボロボロになる。最後なんかもう何も喋れなくなってしまうこともあるのに、能年さんはホントに平気な顔でやってました」
女性5「このドラマは最終回までにヒロインが誰ともくっつかず、結婚せず、出産もせず、それどころか中年の3組の結婚式で。話を盛り上げるために誰かが死なず、朝ドラの定石を打ち崩すように見えたのですが、今までにない新しい朝ドラを開拓しようとされていたのですか?」
訓覇さん「新しいものをやろうというのはなかったです。ただ、宮藤さんとも話していて、見ていて気持ちのいいものをやろうと。この話は震災をまたいで続いていくことだけ決まっていたので、それ以降の事は考えていませんでした。どのタイミングで震災を描くか、たしか第23週で震災をちゃんと描く事に集中して、残りの週をどうするか話し合って、ああ、あの人達の結婚式をしようと」
訓覇さん「電車の開通、恐竜と、リアルとシンクロして描いていますが。恐竜も発見された方に『使わせて下さい』とお願いしました。あんまり今までと違うことがしたいというのはなかったですね」
女性6「勉さんが恋に落ちるとしたら、相手は誰ですか?あ、ミズタク以外でお願いします」←質問者の方、すばらしい読みです。
塩見さん「恋・・・恋?僕らはアイドルの追っかけみたいなもので・・・。あ、夏ばっぱが浮気をしてるんじゃないか?という話の時に、宮本さんが『勉さんはほんとは私にホレてたというのを入れてみたら?』と言う話になって。でも宮藤さんのあのホンにそれを入れる隙はなかったです」
塩見さん「水口と・・・美保純さんのみすずと勉さんがリアスで、みすずが酔って潮騒のメモリーカラオケを歌って・・・水口と・・みすずと勉と・・・・三角関係みたいな・・・」
訓覇さん「みすずなの?水口なの?」
塩見さん「みすずが歌うのを水口が見てて、それを僕が見守ってるという、三角関係的な・・・井上さんに、二人の横に座って見ている感じにしてと言われて」
訓覇さん「おれ見てない。最初の編集からそのシーンなかったですね」
結局、勉さんが恋に落ちる相手は塩見さん自身にも分からず。水口の名前を連呼して終わりました。
訓覇さん「さあ、最後の質問にしましょうか。ファイナル勉さんですね」
女性7「勉さんは結局ユイちゃん推しだったように思うのですが、ユイちゃんに対してはどんな感じだったのでしょうか?」
塩見さん「リアスでユイちゃんと二人きりのシーンが結構ありましたね。しんみりした。ユイちゃんを守ってあげたかったんだと思いますが、それがユイちゃんに届いてはいけない。届くとユイちゃんは気付いてしまうので。守ってあげたいのに、届いちゃいけない。届くと、彼女のお芝居の幅を狭めてしまうと思ったんです」
女性7「ユイちゃんは東京に行くと思いますか?」
塩見さん「想像したことないです。ああいう子は、地方にいそうな感じがするんです。でも、彼女を見守ってあげる人がいないんじゃないかな」
これでほんとうに最後でした。
塩見さん「今日が最終回だったけど、そこで終わりではなくて、この会を皆さんと出来て、ようやく終わり」という気持ちだったそうです。
「ほんとは元気になるものにしたかったけど・・・」と言いつつ、サントラの中からしんみりとした「家族」をかけながら、笑顔で、でもちょっと名残惜しそうに退場されました。